研究内容

最終更新日: 2017-09-27
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Dirac強磁性体の輸送特性

Phys. Rev. B 90 214418 (2014). arXiv:1404.4741

磁性体スピントロニクスにおいてスピン軌道相互作用の効果は質的に新しい現象を引き起こすため,近年盛んに研究がなされています.我々はスピン軌道相互作用などの相対論的効果を含む強磁性体の最もシンプルなモデルとして,Dirac方程式に基づく強磁性体(Dirac強磁性体)を一般的な形式で提案し,その輸送特性を明らかにしました.

具体的には異方性磁気抵抗効果(AMR)と異常ホール効果(AHE)とを線形応答理論に沿ってグリーン関数法を用いて調べました.Stoner強磁性体を相対論的領域に拡張すると,強磁性の秩序変数に2種類が考えられる(以下,‘磁化',‘スピン’と呼ぶ)のですが,AMRを決定する2つの因子「フェルミ面の変形による異方性」と「不純物による減衰定数の異方性への依存性」を,それらの秩序変数依存性を定量的に明らかにしました.AHEに関しての発見は,‘スピン’が有限の場合には,化学ポテンシャルがバンドギャップ中にある場合においても,量子化されていないAHEが生じることを解析的に示しました.

Dirac電子系のスピンHall効果

J. Phys. Soc. Jpn. 86, 094704 (2017). arXiv:1705.03605

Dirac電子は相対論的な速度領域でのみならず,固体中において電子が有効的にDirac電子としてふるまう場合があることは古くから理論的に示されていました.具体的には,ビスマスのL点まわりでの電子状態はDiracハミルトニアンによって記述されます.それはスピン軌道相互作用の強い極限に等しく,スピンHall効果も非常に大きなものになると先行研究によって示されていましたが,その理論的研究では不純物によって生じるスピンHall効果の寄与(外因性スピンHall効果)が含まれず,不純物のない純粋な結晶における内因性スピンHall効果のみが議論されていました.

そこで我々は,不純物の効果まで含めて内因性と外因性スピンHall効果を同じ土台に立って計算することで,先行研究との比較を試みました.内因性スピンHall効果はFermi準位がバンドギャップ中にある場合が最大になるという先行研究の結果を再現しましたが,外因性の寄与によって全体のスピンHall効果はFermi準位がバンドにかかっているときの方が大きくなるという結果を得ました.特にskew散乱による外因性の寄与は(バンドギャップ/不純物濃度*不純物ポテンシャル)に比例するため,不純物が少ない方が外因性スピンHall効果が支配的になることを示しました.このようなふるまいは異常Hall効果においても同様の議論がなされています.

ただ,ビスマスにおけるスピンHall効果の実験結果と比較するには,T点に存在する正孔による寄与の見積もりや不純物ポテンシャルの扱いなど,まだ不十分な点がいくつかあり,さらなる研究が必要です.