最終更新日: 2011/10/10 作成日: 2011/10/05
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日本語で「円筒」と言うと,普通は中身が空洞になっているものだろう. きっと日本人ならそう思う.だって「筒」自体には中空であることが定義に含まれているのだし.

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はじめに

日本語で「円筒」と言うと,普通は中身が空洞になっているものだろう.きっと日本人ならそう思う.だって「筒」自体には中空であることが定義に含まれているのだし.

ところが「円筒」と辞書1で調べてみると,

  1. まるい筒。
  2. ⇒円柱2

とある.第一義は確かに中身が空洞らしい. けれど意味の二つ目には「円柱」の定義を参照しろとなっている. 「円柱」の項を見てみるとこんなことが書いてある.

  1. まるい柱。
  2. 円周の一点を通り円と同一平面上にない直線が、円周上を平行移動するときにできる曲面と、その円およびそれと平行な面によって囲まれる立体。直円柱と斜円柱とがある。円筒。円壔(えんとう)。円柱体。

どうも2は数学的な定義らしい. 数学では形が重要であって中身が詰まってるかどうかは気にしないということだろう2. ということは,数学上は「円筒」も「円柱」も同義ということになる. さらに調べてみると「円筒」に対応する英語は"cylinder"で「円柱」に対応する英語にも同じく"cylinder"があった3. どうも数学上は中空かどうか問題でなかった.だが物理学ではどうか. 「円筒」状の導体に電流を流そうとすると,中空なのだから側面にしか電流は流れないだろうし,「円柱」導体に電流を流すなら側面だけでなくて内部にも電流が流れるだろう. 「円筒」と「円柱」との違いは大きいはずだ. と想像されるが正確にはそうではない. 「円筒状の導体」とは言うが,「円柱状の導体」とは言わない4

経緯

このことを認識した経緯は,電磁気学の問題に「円筒状の導体の内部に電流を流す」という表現があったのが発端だった.「円筒」という表現につられてしまうと円筒の側面にしか電流が流れないのだと思ってしまうが問題の真意とは違い,真意は文字通りの円筒の「内部」に電流が流れるというもの.「円筒状の導体だから中身は空っぽのはずで,電流なんて流れないんじゃないの?」という疑問が「はて,円筒とは何ぞや」という疑問を生んだのだった. 問題を作る場合は,中身が空っぽならば「中空の円筒状の導体」という風に明記することが必要だろう.


  1. 辞書と言っても,デジタル大辞泉.国語辞典や広辞苑で調べてみるとまた違うかも? ↩︎

  2. 確かに幾何学で中身が詰まってるかどうかなんて気にしたことがない. ↩︎

  3. 「円柱」については他にも"column", “pillar"などがあったが. ↩︎

  4. そういう表現を僕が見たことないだけかもしれないが. ↩︎