1. 何が小さい量なのか? ¶
「原点近傍の電気双極子( の電荷が だけ離れているとする)のつくる電場は十分離れた位置 では」などと言って とする.このとき,何が微少量かと言えば, から分かるように なのである.が微小量だと言うのは間違いであることに注意してほしい.自体はどんな大きさでも良いのである.決して小さくない値,たとえばであっても,なら文句無くなのである.何かに対して小さいとか大きいとか言えても,それ自体には大きいも小さいもないということ.また,という書き方も気持ち悪いと感じられるようになってもらいたい. は距離の次元を持つのに対して,は単なる数でしかない.単位がないのである.これでは,その が1メートルなのか,1キロメートルなのか,はたまた1ナノメートルなのか定まらない.と表記すれば,それはととが比べられていて,同じ次元の大小関係になっているのである.
以上はまだ分かりやすい例で,少々込み入ったものに,統計力学ではお馴染み(?)の のような形をしたものがある.
高温とはの意味であり,低温とはすなわち のことである.
それぞれの場合で が に近い量なのか微少量であるかが変わってくる.
無次元量について議論するならば,高温では となる.つまり,微少量は なのであって, は微少量ではなくて に近い値をとる.逆に低温のときは から は微少量となる.これをまとめると,
高温()のとき,
となり,
低温()のとき,
である.
2. どの近似式を用いるか?どのオーダーまで残すか? ¶
ほとんど1.と対になっているようなものだが,どれが微少量かハッキリとしたとき,適切な近似を用いなければならない.特に紛らわしい項として を挙げておこう.何が微少量で,どれを展開すべきか,と考えよう.
繰り返しになるが,高温では,つまり,微少量は だった.よって は微少量ではなくて に近い値をとる.から,
低温のときは から は微少量となり,から
となるのである.
学部で習う電磁気学や統計力学では,打ち消し合わない限りだいたいが最低次までの展開でよく,稀に高次の項を求めなければならない場合がある.